校長室だより

2017.01.07

3学期始業式 校長あいさつ

みなさん,新年明けましておめでとうございます。
平成29年がスタートしました。「酉」の年です。酉の年は10番目にきていますが、以前お話ししたように、酉は猿と犬の喧嘩の仲裁に入ったために、その間の10番目になったのだそうです。この酉という字の語源は、果実が成熟の極限に達した状態を表しているそうです。みなさんが成熟して、酉のように大きく羽ばたく年になればと願っています。
さて,みなさんは「重松 清」という作家を知っていますか。私は家族のあり方や,人の生き方を暖かく描いたこの方の作品が好きです。その作品の一つ,「小さき者へ」の中に,次のようなくだりがあります。「とかく人生なんて後悔の連続なんだよ。なにかに後悔しそうになったとき,後悔をグッと呑み込んで,自分の決めた道を黙々と進む,それが『押忍』なんだ,人生なんだ。」
次にあげるのは,重松さんの作品を読んだある人の話です。「体育系の人や応援団の人たちが挨拶の言葉として「おす!」と言うが,どういう意味なのかわからなかった。漢字で押忍と書き,「押して忍ぶ」ことだ,と言われてもわからない。重松さんは作品のなかで「苦しいとき辛いときに逃げたり引いたりするのではなく,押してるんだ。口に出してああだこうだと言うんじゃなくて黙って,忍んで,でも負けていない。それが『押忍』の心なんだ」と解説してくれた。それで少しわかった。」と述べています。
重松さんの小説の中で高校中退を決意した少女,美奈子の父親は,昔応援団長として活躍していました。中退を考え直させようと苦悩する父親が,娘に言って聞かせる言葉が最初の言葉です。「人生には押して忍ばなきゃいけない場面がたくさんあるけど,大切なのは後悔しそうになったとき,自分の決めた道を黙々と進む。決断には失敗もあり,間違いもある。自分のスジを曲げなきゃいけないときもある。そういうときも押忍の心があればいいんだ。」と。
母親も「応援するっていうのは『がんばれ,がんばれ』って言うことだけじゃないの。『ここにオレたちがいるぞ,おまえは一人ぼっちじゃないぞ』って教えてあげることなの。どんな人にも応援団がいる。応援してもらえない人には,応援する人の気持ちなんてぜったいにわからないのよ。」と話して聞かせます。
この体育館にいるみんなには多くの応援団がついています。応援に応えて,自分を大切にし,人をも大切にし,大きく成長する3学期であって欲しいと願っています。もちろん、高校三年生、大応援団が後ろにいると思ってセンター試験に向かってください。
中学1年生から高校3年生まで、全員がそろって一つの階段を登る学期です。風邪などひかないように、元気に過ごしてください。

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