校長あいさつ

 平成三十年三月一日、卒業生のみなさん、生涯忘れ得ぬ日を迎えました。高校時代は人生第二の誕生と言われ、大きく成長を遂げる三年間を過ごし、卒業という日を迎えたのです。このよき日に当たり、多くのご来賓、保護者の皆様の心からの祝福をいただき、第五十三回卒業証書授与式を挙行できますことに対し、心から感謝申しあげます。

 ただいま卒業生二百十一名に卒業証書を授与いたしました。そのとき卒業生の目の輝きに、この三年間の教育の成果を見る思いがいたしました。「おめでとう」「よくがんばったね」という言葉に、目で、心の中で「ありがとうございました」と返してくれたことを私の脳裏にしっかりと焼き付けておきたいと思います。

 また、長い間、陰に日向に、いろいろとお心を痛められ、ここまで育ててこられた保護者やご家族の方々のお気持ちは、いかがであったでしょうか。思いひとしおのものがあるとお察しいたし、改めてお祝い申しあげます。本当におめでとうございます。

 さて、この三年間、木々の息吹を感じる春に始まり、若さみなぎる夏に汗し、木々の葉の散る秋に愁い、寒風吹き荒む冬の厳しさに耐え、心と知識を育んできました。この間、国の内外を問わず社会の変化も激しいものがあり、時には悩み、悲しみ、苦しみ、怒ることもあったと思います。この間に生じました事象を追いましても、その激しさがうかがえます。地域紛争、自然災害、教育問題、経済状況等々、喜びもありましたが、それ以上に危機とも言える現象が津波のように押し寄せてきました。

 みなさんは、このような社会状況の中においても、多くの方々の支えによって今日の日を迎えることができました。現在の生活は、豊かで幸せでありましょう。昨年の十月、海外の修学旅行ではサイパンに、国内の修学旅行では北海道で数日間を過ごしました。サイパンには華やかなリゾート地の顔と、七十二年前に起こった痛ましい戦争という渦中にあって、学びたくても学べなく、まして青春を謳歌するなど考えることすらできず、若くして散っていった人々について、静かに語っている錆付いた砲台等を見ることができました。また北海道では宇宙ロケット開発に夢を託している人々の熱い眼差しに出逢い、夢を諦めずに追い続けることの素晴らしさを体感したものと思います。

 今私たちは、ある意味では豊かさの中で暮らしていますが、これは一朝一夕によって得られたものではありません。これからも、もっと、もっと大切にしていかなければなりません。今のみなさんがあるのは、父母、兄弟、先生、友人、地域の方々の温かさの中で育まれた努力の所産なのです。今日という日は、多くの人々の心に感謝し、今までの自分を振り返る日でもあると思います。

 幸いみなさんは、この広島城北高校で「学んで厭かず、教えて倦まず」というすばらしい校訓のもとで学業に励みました。自らを律し、知的好奇心を膨らませ、豊かな心をもった生きかたは、円滑な社会生活を送るうえで欠くことのできないものであり、自分を大切にし、同時に人も大切にする生きかたにつながるものです。みなさんが本校で培った力をもってすれば、どのような苦境に立とうとも必ずや正しい方向を見出し、さらに高い次元へと歩みを進めていけるものと確信しております。

 「未来というものは、現在できることの先には絶対にありません。未来とは、未知なる進化の先にあるものです。子どもたちに諦め方さえ教えなければ、彼らは勝手に未来を切り開きます。どんなことでも、できる理由を考えればできるんです。できない理由を思いついたときには、それをひっくり返してください。それはできる理由になるんです。」

 これは先ほど述べた北海道の修学旅行で立ち寄った宇宙ロケットを開発している植松電機の社長さんである植松努さんの著書、「NASAより宇宙に近い町工場」の最後に書かれた一節です。私たち大人にとっても心に響く言葉だと思います。

 これからの社会、様々な情報が溢れています。柔軟な頭脳を鍛え、情報の選別能力を高め、何が適切なものであり、自分に必要なものかを選別できることが大切になります。植松さんの言わんとするとことは、大切な時間を無駄にすることなく生き抜くこと、どこまで行っても学びに終わりはない、ということだと私には思えます。

 みなさんの将来は、未知数でありますが、みなさんには、学校で身につけた、絶えず学び、苦しくても努力しつづけるという基礎的な力があるはずです。皆さんが三年間の学校生活の中で折に触れて見せてくれた素直で明るく若さに溢れた姿は、鮮明な印象として私たちの心に強く残っています。学習に勤しむ姿、部活動、体育祭や文化祭、クラスの名誉をかけて戦った球技大会などの諸行事への取組みの意気込みやエネルギーは素晴らしいものがありました。そのとき味わった一つのことを成し遂げた力や気力をもってすれば、未来に向かって大きく飛躍できるものと思います。

 おわりになりましたが、ご来賓のみなさん、保護者のみなさん、そして教職員のみなさん、本日はありがとうございました。厳粛なうちに、すがすがしく卒業証書授与式が挙げられましたことを心から感謝し、卒業生の洋々たる人生が開けるよう祈念して式辞とします。