太田川も新しい季節を運ぶかのように流れ、戸坂一帯も春の訪れとともに一層輝きを増し、まさに春爛漫の佳き日、多くのご来賓、保護者の皆様のご臨席をいただき、ここに広島城北中学校第五十八回、広島城北高等学校第五十六回入学式を執り行うことができますことは、この上ない喜びであります。

 広島城北中学校に第五十八回生として入学された百八十一名の皆さん、広島城北高等学校に第五十六回生として入学された211名のみなさん、ご入学おめでとうございます。みなさんは多くの難関を乗り越え、みごと本校への合格を果たし、それぞれの夢と希望をもって、ここに臨んでいることと思います。私たち教職員一同、皆さんの期待に応えるべく総力をあげて支援する決意でおります。

 本校は昭和三十六年に第一回の中学校入学式を挙行し、昭和三十八年に第一回の高等学校入学式を挙行して今日にいたっております。今年度で創立五十七周年を迎え、半世紀を超え新たな歩みを進めようとしています。

 本校には三つの「建学の精神」に裏打ちされた、素晴らしい校訓でもあり、いわゆる箴言(しんげん),いましめの言葉があります。それは「学んで厭かず、教えて倦まず」ということばです。何事にも立ち向かっていこうとする気概と誇りを持った生き方を通して、無限の可能性を秘めた若者たちを、どこまでも雄々しく育てて行こうとする城北教育の真髄であると私は理解しています。

 去る三月一日には第五十三期生が、自らの進路目標に向かって努力し、雄々しく飛び立っていきました。皆さんも本校の校訓の精神でもって、人を頼まず自らを信頼し、学びそして知ることに喜びを持ち、心身を鍛え、自らを制する精神をもって、二十一世紀の国際社会に向かって大きく成長するための礎を、ここ城北で培っていただきたいと思います。

 「I have never met a man so ignorant that I couldn’t  learn something from him」

 「あまりに無知で何も学ぶべきものがないという人には会ったことがない。」

 これはあくまで地動説の正しさを主張した近代科学の父、ガリレオ・ガリレイの言葉です。ピサ大学で医学を学び、その後数学、物理学の研究にいそしみ、ついには望遠鏡を制作して天体観測を行い、数々の発見とともにコペルニクス地動説の正しさを立証しました。人との出会いの中で、それがどのような出会いであっても、何か学ぶものがある、というガリレオの生き方を物語っている言葉だと思います。

 これから皆さんが学ぶ広島城北中・高等学校での生活は、強い勉学への意志と能力をもった生徒が、自らの希望と判断によって選択した人生の一段階であります。得意な教科のある人はそれをさらに伸ばし、あまり得意でない人も、勉強は学校生活の基本であることを心に留めておかなければなりません。

 華麗に空を舞うムササビという動物がいますが、多くの人がその姿に魅力を感じます。山梨県の都留市は、ムササビの見られる町として有名です。空を舞っているムササビを撮影するために、県内外を問わず、たくさんの動物写真愛好家たちが集まります。夜行性で、シャッターチャンスの少ないムササビは、動物写真愛好家にとって、特別な意味を持つのだそうです。

 ところで、このたくさんの人を魅了するムササビですが、実はムササビは飛べないのです。グライダーのように滑空して降りてくるだけ、しかも夕方以降しか飛ばないムササビは、上昇気流も使えないので、上昇することは一切できません。木の上に行くには、爪を使って少しずつ地道に登るのです。人は、ムササビの華麗なる滑空に心を奪われますが、地道に木を登る姿に注目しようとはしません。

 中学校・高等学校は自分の可能性を試してみる期間です。華麗なことのあとには、また地道な努力をしなければならないことが数多くあります。ガリレオが人を敬愛し、人から学び、己を高めていったように、そして華麗な滑空で人を魅了するムササビが、必死になって木に登っているように、陰で地道な努力をするからこそ人を魅了したり、人から大切に思われる人に育って行くものだと思います。

 皆さんは自らの責任において積極的、主体的に目標に向かって努力していかなければなりません。これからの6年間、3年間という航海の大海原のかなたには、必ずやみなさんの探し求めるものが待っています。心を豊かにして、大きな気持ちで学校生活に果敢に挑戦していただきたいと思います。

 最後になりましたが、保護者の皆様、本日は、誠におめでとうございます。私たち教職員は一丸となって、精一杯指導に打ち込み、保護者の皆様をはじめ、地域の方々の期待に応えられる教育を推進してまいります。本校教育と本校教職員への変わらぬ信頼と、ご理解、ご協力を賜りますよう衷心よりお願いして、式辞といたします。