校長あいさつ

式辞

 令和三年三月一日、卒業生のみなさん、生涯忘れ得ぬ日を迎えました。高校時代は第二の人生の誕生とも言われ、大きく成長を遂げる三年間を過ごし、卒業という日を迎えたのです。このよき日に当たり、保護者の皆様の心からの祝福をいただき、第五十六回卒業証書授与式を挙行できますことを、心から感謝申しあげます。

 ただいま卒業生二百一名に卒業証書を授与いたしました。時計の針が前に進むと「時間」になります、後に進むと「思い出」になります、と言った詩人がいます。みなさんにとって、今日この瞬間から城北での生活は「思い出」になっていきます。それぞれ個人差があるとは思いますが、みなさんは今をしっかり生きる、「今の時間」を積み重ねていけばおのずから「思い出」深い過去ができる、そういう思いで三年間を過ごしてきたと信じています。

 特に昨年から新型コロナウイルス感染症の広がりの中で、思い出の中に当然残っているであろう学校行事や授業が消えていきました。それでも、みなさんの爽やかな笑顔や、頑張っている姿は、私を含め城北での生活を心豊かなものにしてくれたことは、いつまでも記憶の中に留まっています。

 また、長い間、陰に日向に、いろいろとお心を痛められ、ここまで育ててこられた保護者やご家族の方々のお気持ちは、いかがであったでしょうか。思いひとしおのものがあるとお察しいたし、改めてお祝い申しあげます。本当におめでとうございます。

 さて、三年間、木々の息吹を感じる春に始まり、若さみなぎる夏に汗し、木々の葉の散る秋に愁い、寒風吹き荒む冬の厳しさに絶え、心と知識を育んできました。この間、国の内外を問わず社会の変化にも激しいものがあり、時には悩み、悲しみ、怒ることもあったと思います。この間に生じました事象を追いましても、その激しさがうかがえます。地域紛争、自然災害、教育問題、経済状況、そして先ほどの感染症等々、喜びもありましたが、それ以上に危機とも言える現象が津波のように押し寄せてきました。

 しかしながら、みなさんは、このような社会状況の中においても、多くの方々の支えによって今日の日を迎えることができました。高校二年生では沖縄とシンガポールに分かれて修学旅行に行くことができました。訪れた地は華やかなリゾートの顔と、七十五年前に起こった痛ましい戦争という渦中にあって、学びたくても学べなく、まして青春を謳歌するなど考えることすらできず、若くして散っていった人々の存在を忘れてはならないと思います。

 現在の生活は、ある意味豊かで幸せでありましょう。この豊かさや平和は一朝一夕によって得られたものではありません。これからも、もっと、もっと大切にしていかなければなりません。今のみなさんがあるのは、父母、兄弟、先生、友人、地域の方々の暖かさの中で育まれた努力の所産なのです。今日という日は、多くの人々の心に感謝し、今までの自分を振り返る日でもあると思います。

 みなさんの将来は、未知数ではありますが、みなさんには、本校で身につけた、絶えず学び、苦しくても努力しつづけるという基礎的な力があるはずです。みなさんが三年間の学校生活の中で折りに触れて見せてくれた素直で明るく若さに溢れた姿は、鮮明な印象として私たちの心に強く残っています。

 おわりになりましたが、保護者のみなさん、そして教職員のみなさん、本日はありがとうございました。厳粛なうちに、すがすがしく卒業証書授与式が挙げられましたことを心から感謝し、卒業生の洋々たる人生が開けるよう祈念して式辞とします。

 

令和三年三月一日

広島城北高等学校 校長 岩本 光彦