新型コロナウイルス感染症から始まった今年度と言っても過言ではないと思える年度が修了します。みなさんの大切な思い出の一コマとなるはずだった学校行事など、断念せざるを得ない状況が続きました。

 それでも生徒会執行部のみなさんの努力で、形は変わりましたが文化祭や球技大会を企画・立案し実行してくれました。地域によって差はありますが、来年度は一日も早く終息に向かって動いてくれることを心からを願っています。

 さて、以前もお話したことがあるのですが、みなさんは「クリティカル・ピリオッド」という言葉が記憶にあるでしょうか?

 生まれたばかりの子猫を横線だけで囲んだ飼育箱の中で,約2週間育てます。その後,普通の環境の中にもどすと,猫の視覚に障害が起きることがあるそうです。つまり横の線だけでの環境で育てられたため,縦の認識ができなくなるそうです。この実験から、猫にとって生後2週間は,視覚のためにきわめて大切な期間で,この期間に環境を認識するための適切な条件を整えてやらないと,完全な視覚が発達しないということです。

 もっと一般化していうと,生物にはそれぞれの成長段階に適合した条件なり刺激を与えないと,正常な発達を望むことは出来ないと言えるようです。

 同じことが,皆さんが今学習している内容にも、ある程度言えることがあります。例えば日本人にとって,RとLを聞き分け正しく発音できるようになるには,小学生くらいまでが限界であると主張する研究者もいます。レストランに行って「パンでなく,ライスにしてください」といっても,それは英語圏の人にとっては米でなく,シラミと聞こえるという笑い話もあります。

 人間のもつすべての能力について,その「クリティカル・ピリオッド」が解明されているわけではありません。しかし,授業をする先生方は,1年生段階はこれとこれ,2年生段階ではこれとあれというように,大まかな「クリティカル・ピリオッド」を把握しながら,毎日の授業を進めています。

 人間は素晴らしい能力を持っている生物ですが、それらは、はじめは「潜在」しているのであって,その潜在能力を機能させるような刺激が与えられ,訓練がなされないと,潜在能力は隠れたままで終わってしまいます。1年間,あるいは2年間を過ごしてきて,学校の授業は厳しいなとか,難しくてとてもついていけそうにないなどと,思い悩んでいる人もいると思います。しかし新しい年度が始まります。みなさんも「クリティカル・ピリオッド」に想いを馳せて,今努力していることが自分の能力を伸ばすことにつながると意を強くもって,新しい年度を迎えていただきたいと思います。